映画小僧の偏見映画研究

ただの映画好きによる映画研究

ダンケルク

本日はこれ。

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観てきました。

念願のやつ。

 

1回目は通常盤、2回目をIMAXで計2回観てきました。

 

今回ダンケルクについて書いていくわけですが、本作はその構成上、ネタバレしてもOKだと思ってるんで、今回はそんなに注意しなくて大丈夫です。
たぶん、、、

 

 

ダンケルク、どういう話かと言いますと、1940年5月20日から6月4日にかけてあったダンケルク撤退作戦という第2次大戦のはじめの時にあった有名な戦いを描いた映画です。

 

 

観る前に僕は思いました。

 

 

ダンケルクとはなんぞや?と

 

イギリスとフランスは海を挟んで向かい合ってるわけですが、そのフランス側の海岸にダンケルクはあります。

フランスの人気海水浴場で夏はごった返すそうです。

 

でこの海岸にイギリス、フランス、ベルギー、カナダの連合軍40万がドイツ軍に包囲されたんです。

こんな状態です↓

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 めっちゃ囲まれてます。 

これを船でイギリスまで撤退させる作戦の話です。

 

でこの作戦、奇跡と呼ばれてるんですが、なにが奇跡かって40万人中、約33万人も救出されたんですよ。

結局イギリスは負けてヨーロッパからフランスと共に撤退して、ナチスドイツはその後フランスを完全に占領しちゃいます。

だからダンケルクの戦いは負け戦なんですけど、兵隊たちを助けたことで、イギリスと連合軍は後にドイツに勝つことができたんです。

勝利のための撤退作戦の映画ということで、世界から注目されてるわけです。

 

この映画は

陸地での1週間、

海上での1日間、

上空での1時間

の3つの視点で描いていて、それぞれ非常に異なる視点で対比させながら見せています。

ドイツ軍によってダンケルクの海岸に追い詰められた陸軍の歩兵たち。

彼らを脱出させる海軍。

ドイツ軍の空からの攻撃から歩兵たちを守る戦闘機乗り、この3つです。

 

さてこの映画、一言でいうと

 

「ノーラン式体験型戦争サスペンス映画」

 

まずダンケルク語る上では避けれない監督、クリストファー・ノーラン

バッドマン3部作、インセプションインターステラーなどの監督です。

どんな監督かというと、

CG嫌い、デジタルカメラ嫌い、で有名です。

まあ嫌いではないんでしょうけど、なるべく使わずにリアルを追い求めている方です。

バッドマンでは本物のビル丸ごと一棟爆破したり、巨大トレーラーをひっくり返したり、

インセプションでは、無重力状態を作り出すために築き上げられた360度回転するセットで撮影したり、

インターステラーでは実物大の宇宙船作ったり、

大掛かりな撮影が困難な時はミニチュアとかを作って特撮して、CGをなるべく使わないようにしてます。

 

ストイックですねー。

 

そんなノーラン氏ですが、ダンケルクはCG一切無しとのこと。

 

(ノーラン)「第二次世界大戦の画像には、合成やコンピューターグラフィックスの持つ緑っぽい色は合わないんだよ」

 

はっはい、、、

 

さてどう撮影したかというと、まず劇中の戦闘機2機は本物、レンタルしてます。

そしてもう一機、約5億超でレプリカを作ったみたいです。

つまり、劇中の戦闘機が飛んでるシーンは全部まじで飛んでるわけなんですよ。

撃墜シーンは撃墜用のレプリカをまじで海につっこましてます。

 

映画『ダンケルク』特別映像(驚異の空撮メイキング編

https://youtu.be/FCTTwbRL9iM

 

実際の戦争では何百もの戦闘機が飛び回ってるわけなんですけど、そんなのCG使わないとできないです。

そこでノーランは、

「2機ほんまもん借りれたし、もう1機作って3機をメインにしたらええやん」

という方向にもっていったんです。

まあ本物借りれちゃうとね(笑) 

駆逐艦も本物でフランスの博物館から借りてます。

ボートも当時実際に使われたボートです。

兵隊達も6000人のエキストラと後はハリボテで35万人に見せてます。

すごいですよね。

リアルを追求してます。

中でも戦闘機のシーンは特に素晴らしい。

これらの要素が本作にすごい臨場感をもたらしてるわけです。

 

我々が興味を感じたのは、観客に当事者たちがその現場で感じているのと同じ主観的な経験をさせることだった。

とノーランはコメントしてますが、これがまさに体験映画と呼ばれる所以です。またそのための緻密な計算がいたるとこに張り巡らせてあります。

 

まず初っ端から銃の音がごっついリアル。

からの手持ちカメラで追っかけ。

冒頭から一気に引き込まれちゃうんですよ。

体験型映画というだけあって、もう自分もそこにいるかのようになっちゃうわけです。

ここで観客は兵士にさせられるんですよ。

なんの説明もなく進んでいくんですけど、そんなんいらないんです。

この冒頭の銃撃からいきなりスイッチいれられます。

 

そこからも大変です。

ダンケルクは遠浅で桟橋がないと大きい船が停泊できないんです。

だからみんな桟橋で船を待ってるんですけど、もう空からぎゃんぎゃん攻められます。

船に乗っても銃撃で穴は空くし、爆撃されるし、魚雷もくるし、何回も沈むし、これ助かんのか?てなるわけです。

このリアクション芸がすごい。

セリフとか特にないんですけど、これがまたリアルで無駄がない。

ちょっと落ち着いて、自分の生い立ちとか心情を語り始める、、、

そんな事が一切ないんですよ。

緊張感が途切れないようになっています。

出川哲郎もびっくりのリアルガチです。

 

これどうやって33万にも救出したのかというと、漁船、遊覧船、貨物船、とか民間船を含んだいろんな小さい船がイギリスから約900隻も助けに来るんです。

もうこちとら兵士の1人みたいになってるわけで、船が助けに来たシーンは胸熱でした。

ノーランさん、この英仏海峡を実際に小船で渡ったことがあるそうな。

僕が本当に痛感したのは、民間人が小さな船で戦場へ向かおうと考えることが、どれだけすごいことだったかという点だった。何キロも先の煙や炎が見えたはず。そんな中でも意思を貫いたとおうこと、そしてそれが意味する共通の精神というものが驚くべきものなんだ。

実際では多くの兵士達は駆逐艦で逃げたそうなんですが、今回助けに来る民間船パートを濃く描いたのはこういった思入れがあったからでしょう。

あと、船で助けに来た民間人の中の1人の子供が死んじゃうんですけど、これが戦争のリアルというか、助けに行こうってすごい勇気ある行動でその子が死ぬのはすごい不条理なんですけど、これが戦争の現実というのを突きつけられます。

「戦地においての栄光の死というもの描きたくなかった」

というノーランのコメントを感じられる場面でした。

ただ死に方がちょっと引っかかるんですけどね。

えっこれで死ぬの?みたいな。

 

逃げようとしてる時もドイツ軍が空から攻めてきて、これをトムハーディ演じるパイロットが撃ち落としていくんですけど、燃料が切れてエンジンが止まってもドイツ軍を撃退する姿はこれまた胸熱です。

やっぱりこの映画の1番良いとこはトムハーディのパートなんですよ。

非常にかっこいいです。

 

音も非常にこだわってます。

銃声、爆発音とか臨場感たっぷりでやばさが伝わります。

あと劇中頻繁に時計の秒針みたいな音が鳴ってるんですけど、これがなかなかのジャブで、良い緊張感にしてるんですよ。

当時の戦闘機は1時間ぐらいしか飛べなかったんで時間との戦いみたいなところもあったり。

敵も迫ってますし、全滅するにしても、助かるにしても時間が無い。

この音によって脳に時間の焦りを植え付けてるんですねー。

ノーランも「ダンケルクは時間との戦い」とコメントしていましたが、まさにです。

 

音楽も緊迫感あって良かったです。

怖いんですよ。

映像と大変マッチしております。

 

余談ですがONE DIRECTIONのハリーが出てます。

兵士役にはできるだけ経験の浅い俳優を使いたかったらしく、ハリーは演技経験がなかったそうです。

実際のダンケルクでは、何もわからない18、19歳の若者が生死の境目に放り込まれたからだそうな。

僕は1回目に観た時はハリーがでてた事に気付きませんでした。

2回目観てみるとがっつりでてました(笑)

 

ダンケルクでは敵側のドイツ兵はほぼでてきません。

戦闘機と音ぐらいです。

なのに臨場感があるのはすごい事です。

見えないからこそ怖い、これが戦争だといわんばかり。

恐ろしい演出です。

そして人を殺す描写もありません。実際には何人も死んでるのに死体もそんなに映らないんですよ。

この映画は戦う戦争ものじゃなくて人を救う戦争の話でっせ、ということですね。

この映画、実際にあった記録を元に作られたんですけど、兵士の戦いの実体験を同じ主観で観れるというか、自分もその場にいるぐらいの緊張感と臨場感があって、まさに体験型映画でした。

そして疲れました。

もう解放してくれーてなるんですよ。

もちろん褒め言葉です(笑)

 

こんな緻密な計算された映画なんですけど、文句があるのもわかります。

戦闘機の数が少ない、

背景がわからず感情移入ができない、

民間船員の死に方が弱い、

しんどい、

うーん、たしかに全部わかるんですよ。

リアルを求めた故の弊害が何個かあると思います。

でもこれがノーラン式なんですよ。

あとダンケルクはストーリー自体はシンプルなんで過去作の、メメントインセプションインターステラー、みたいな難しいお題を扱ったノーラン好きの人はがっかりしたかもしれませんねー。

 

イギリス人にとって軍と民が一体になったダンケルク撤退作戦は、「ダンケルクを忘れるな」「ダンケルク魂」っていう言葉がいわれていて、当時イギリスの首相に就任したウィンストン・チャーチルが、

「陸海空において、神が我々に与えた全ての力を用いて戦う」「決して、諦めるな」

と演説で言ってるんですけど、この映画はその「ダンケルク魂」そのものを描いているんだなと思いました。

 

一味違う戦争映画ダンケルク、是非劇場でその臨場感を体験してほしいと思います。

DVD、ネットじゃだめです(笑)

そしてできればIMAXシアターで!

 

作品評価

4/5